6/25/2020

ウラ・ヴォン・ブランデンブルグのインスタレーション/ パレ・ド・トーキョー


Ulla Von Borandenburg "Le milieu est blue"/ Palais de Tokyo

コロナウィル後、無性に現代アートが見たくなり、パレ・ド・トーキョーに行ってきました。ここは普段でも混まないので、予約なしで入れます。展示はドイツ生まれ、パリ在住のウラ・ヴォン・ブランデンブルグのインスタレーション。自分で染色した布や、ナチュラルなマテリアルを使用した巨大なもので、ヴィデオや、一種のテアトルの実演など3つのテーマに分かれています。


劇場の幕、大道具の背景、サーカスのテントなどを思わせる巨大な天幕の中に、ビジターは入り込んで鑑賞します。まるで自分がこのインスタレーションの一部になったようでもあり、移動するごとに作品は別の形や色に見えます。

布の上に映されたヴィデオは、水中を漂う布、リボンのような紐、赤い靴。スクリーンもヴィデオも。ゆらゆらと・・

 

北欧のヴァイキングやエスキモーのフォルクロール、遊牧民、ある種の素朴な宗教・・
ウラ・ヴォン・ブランデンブルグの意図するものに納得や共感はできなかったし、インスタレーションもマジメに正面から写真を撮ると、平坦でちょっとつまらない。ということで以下の写真は、作品の裏側というか普通人が行かない場所から、わざと特別なアングルで撮ったものです。この "面白いアングルを見つける" という作業は、実はとても楽しかったのです。ビジター自身がテアトルの中心になり、好きに解釈し鑑賞する・・それがアーティストの意図したところかもしれません。


ついでにパレ・ド・トーキョーについて。
ここは1934年の万国博覧会の時に近代美術館として建てられたのに、ポンピドーやオルセーに押され、建築博物館になる予定もシャイヨ宮に横取りされ、シネマテークになる予定も、フランク・ゲーリーの新しい建物に横取りされるなど不運続きでした。しかし2002年、2012年と大きな改装工事があって、現在は大きなヴォリュームの近代アートの展示場として、アヴァンギャルドな美術館になっています。
改装を担当した建築家がとてもセンスがあったのですね、わざと荒い骨格をむき出しにした改装です。
子供用のコーナー、リトル・パレ。色合いがなかなかシック。下のお絵描きコーナーは、大人と同じむき出しの壁や鉄のドアなど、甘々の子供コーナーでなくて辛口の内装が、さすが!

7月6日に予定されるルーブルの再オープンが話題です。コロナウィルス対策のため、入場者数の制限やマスク着用が義務付けられる上、ツーリストがほとんどいないので(普段ルーブルのビジターの80%は外国人!)がら空きのルーブルが見られるかもしれません。先日、人混みの無いヴェルサイユ宮殿を見たいとわざわざ行ってきた友人たちが、人っ子一人いない鏡の間の写真を送ってきました。ヴェルサイユ自体はもう飽き飽きだけれど、シーンとしているのならば、昔の貴族たちの亡霊に会いに行ってこようかしら・・・

Palais de Tokyo  13, avenue du Président Wilson 16e 9月13日まで  

6/16/2020

ル・コルビュジエのタピストリー/ ポーズカフェ


Une tappiserie de Le Corbusier: Pause-café

今週からカフェやレストランは平常通りの営業に、学校も全員が授業に戻れるようになる等色々な禁止条例が解除されました。しかしコロナウィルスは消えたわけではなく、パリはまだ本来の活気がなくて、ちょっと寂しい感じです。人々はほっと一息、初夏の自然や自由を満喫し、ショッピングやレストランに走るのは一部の人々だけのように見えます・・まだクローズしている商店やレストラン、カフェは、資金繰りが苦しいのか、オープンしてもお客が少なすぎて無駄との判断なのか・・
人数制限のために予約制で、美術館も次々にオープンしています。今日はボザール近くの画廊のウインドーで、ル・コルビュジエのタピストリーを見つけました。

                                    by Galerie Zlotowski
関連ブログ:
CoBrAコブラとル・コルビュジエの関係/ アムステルダム

6/09/2020

ジャック・カリシの国立ダンスセンターCND/ パンタン


CN D Centre nationale de la danse de Jacques Kalisz à Pantin

パリ市内は、オスマン男爵が第二帝政時代に大々的な都市改革をして、幸い美しく統一され花の都と讃えられてしまったので、以来その景観を壊さないよう、新建築の侵入を徹底して拒否する政策がとられてきました。そのためポンピドーセンターやモンパルナスタワーなど例外はあっても、新建築のほとんどは、市を囲む環状道路周辺から外にばかり作られています。国立ダンスセンターCNDもその一つ。1970年建築家ジャック・カリシが、環状道路のすぐ外の町パンタンに建てた、ブリュタリスト(荒々しい、粗野の意味) 建築です。


トップの写真は入り口すぐのホールです。全てコンクリートの生の荒っぽい表面のまま、中央にデンとある巨大な階段が圧巻! 階段とスロープの2つが噛み合ったような形で最上階まで続き、これがこの建物の大動脈です。


写真上、手前がスロープ、よく見えませんが奥に階段のギザギザが少し見えますね。
写真下、こちらは手前が階段、右奧にスロープの黄色いネオンがちらっと見えます。中央の隙間からは、建物一番上の天井まで見える吹き抜け。


元はパンタンの行政センタ―として建てられましたが、時代を先取りし過ぎていたのか、この広いオープンスペースは使いずらいと職員たちに嫌われ、税務局や裁判所も入っていたので市民にも嫌われ、次第に見捨てられ・・取り壊しの話もあったけれど、解体費用が高すぎてそれもできなかったそうです。放り出されていた建物を、国がシンボル的な1€という価格で買い取り、改装して国立ダンスセンターとして2004年に甦りました。この改装工事を担当したアントワネット・ロバンとクレール・ギエッス(二人とも女性!)は、文学で言うとゴンクール賞に匹敵する建築の賞 "金の三角定規賞" を、この改装で受賞しました。


このスロープと階段の交差はとてもユニークで、歩き心地も快適でした。別にエレベーターもあり。コンクリートの荒っぽさとスケールの大きさが美しく、取り壊されなくて本当によかったと思います。



最近急速にボボ化して広いバルコニー付きの最新アパートが増える、人気のウルク運河沿いに建っています。ジャック・カリシが建てた頃は、工場や倉庫の並ぶ、あまりぱっとしない労働者の町だったのです。そのころに比べると、住人のメンタリティーもだいぶ変わっているのでしょう。上右は正面入り口。

資金の関係か、その後もこつこつ改装が続いているようで、現在の状態になったのは2016年だとか。上の写真も、外壁にネット被せているのは、恐らく落下防止用、修理待ちなのでしょうね。
13のダンススタジオ、そのうち4つは観客も入れて、安価な入場料で色々のダンスが鑑賞できます。ダンス関係の図書館、メディアや映像を含む資料室、会議室、映写室、カフェテリアを備え、ダンサーの訓練から教師育成までの総合センターです。
パフォーマンスのプログラムは、面白そうな企画がいっぱい。世界中からダンサーが集まって活気があり、今ではパンタン市民自慢の建物になっているそうです。


CND Centre national de la danse    1 Rue Victor-Hugo, 93507 Pantin

6/01/2020

ラ・フェリチタ/ アール・フレシネ


La Felicità, La Halle Freyssinet

イタリア読みでラ・フェリチタ La Fericità、フランス人が読むとラ・フェリシタは、次々に大ヒットのイタリアンレストランを展開するフランスのグループ、ビッグマンマBig Mamma経営の、巨大なイタリアン・フードコートです。なんでもヨーロッパで一番大きなレストランだとか・・
2年前(だったかしら?)のオープン以来、大人気、大センセーション、長蛇の列で敬遠していましたが、最近はだいぶ落ち着いてきたようです。写真はコロナ騒ぎが起こる前、平日午後の空いている時間帯に撮ったもの。スタートアップの集まるスタシオンF内にあるせいか、お客様は個人やグループで仕事をしている人たちが殆どでした。

大ホールをいくつかのセクションに区切り、高い天井から下がる大きなバルーン、ヴィンテージ列車を改造したキッチン、グリーンの植物がアクセントです。写真上の奧が有名なカクテルバーで、夜はぎっしり並んだボトルがイルミネーションに輝きます。

この巨大な建物はアール・フレシネ Halle Freyssinet と呼ばれ、1927年にエンジニア、ウジェーヌ・フレシネEugène Freyssinet(1879-1962年)が、オーステルリッツ駅裏に建てた国鉄の貨物駅です。教会の身廊に例えられる北、中央、南の3つの半円筒形の屋根を持つ大ホールは、幅72m、奥行き310m。フレシネのテクニックの特徴はその軽さだそうで、屋根のアーチはとても薄く、7cm。専門家でないので詳しい説明はできませんが、この béton précontraint という技術は当時建築界で大変話題になり、その後世界各国に広まりました。フレシネは驚くほど沢山の橋やダム、教会等を建設し、オルリー空港の格納庫も作っています。オーギュスト・ペレほど一般には知られていないけれど、ペレがコンクリート建築の生みの親ならば、フレシネは育ての親といえるのかも・・・

2006年に貨物駅としての役目を終えてから放置され、一時は取り壊しの計画もあったりと紆余曲折の末、2011年に国の歴史的建造物に指定され、2013年、実業家グザヴィエ・ニール(Free、ル・モンド誌 etc.)が買収。総面積34,000㎡の、世界で一番大きいと言われるスタートアップのインキュベーション基地に改造されました。名前は元貨物駅だったこととフレシネの頭文字を取って "スタシオンF"
スタートアッパーのワークゾーン、オープンステージやイヴェントスペースのシェアゾーン、そしてレストラン/カフェ/マルシェのリラックスゾーンの3ゾーンがあり、このレストラン部分がラ・フェリチタです。4500㎡(内1000㎡がテラス)。
工事の写真は、改装中にあった文化財の日の、一般公開の時に撮りました


左(北側)にもう一つ屋根+天窓の身廊があります。
取り壊さずに保存されたといっても、オリジナルは結局天井、天窓、柱しか残っていません。仕方ないですね。そのおかげで、全く新しい現代にマッチした建物に生まれ変わったのですから。
こちらがスタートアップ・キャンパス入り口とレセプション。

コロナウィルスでずっと営業停止だったレストラン、カフェが、明日からテラスだけですが一斉にオープンします。ラ・フェリチタはテラスが広いので、また行列になるかも・・

La Fericità    Station F,  5 Parvis Alain Turing 13e