Vivian Maier aux Douches la
Galerie
レ・ドゥッシュは、Les Douches(シャワー)からもわかるように、昔の公共浴場(キャビン式のシャワー)を改造して作られた写真専門のギャラリーで、アールデコのファサードとホールがそのまま残っています。このギャラリーで、今写真界でちょっとした話題の展示をやっています。
写真家の名前はヴィヴィアン・マイヤー、シカゴで住み込みのナニーをしていた女性で、子供達の世話をしながら50-60年代に写真を撮り続け、その沢山のネガティブを殆ど現像せずにロールのまま残しました。このネガティブが沢山の箱入りで競売に出され、たまたま1箱手に入れた不動産エージェントのジョン・マルーフが、いくつか現像されていた写真の美しさに打たれてその外も現像し、あわててばらばらに競売された外の箱も買い戻したのがおとぎ話の始まりです。箱の中にあった現像所の受け取りのヴィヴィアン・マイヤーの名をネットで探した結果、ほんの数日前に出された、シカゴ・トリビューン紙の彼女の死亡広告にヒットしたのが2009年。マルーフはトータルで10万枚以上にもなる写真を元に“ヴィヴィアン・マイヤー、ストリート・フォトグラファー”と題した写真集を出版し、大きな反響を呼び、それがパリまで来たというわけです。新聞の評には、“沢山の写真家が嫉妬を感じるくらい、いろいろなテクニックを使い、それに全て成功している”とありました。
鏡、ショーウインドー、バックミラーなど、映るものは何でも使って沢山の自画像も撮っています。影だけのものも沢山あり、それらは麦わらの帽子を斜めにかぶり、時には肘にハンドバッグを下げ、もし帽子にマーガレットの花が差してあったら、もう一人の世界的に有名なナニー、メアリー・ポピンズのシルエットのよう・・・
彼女の生前にこの栄誉がもたらされなかったこと、それ以上に、彼女自身が自分の作品の現像したものを一部しか見ていない事が、このおとぎ話のもの悲しい一面ではあります。新聞に出されたという彼女の死亡広告は、昔彼女が世話をしたゲンスブール兄弟が出したもので(彼らが晩年の彼女を経済的に援助していたらしい)“ジョン、レーン、マシューの2人目の母であり、その自由な思想で彼らの人生に魔法をもたらし、いつも助けの手を差し伸べ、映画のよい批評家であり素晴らしい写真家、大変珍しいユニークな人を失ったことを悲しむ”という、単なる儀礼では書けない内容のものでした。
Vivian Maier, Les Douches la Galerie 12月21日まで 5 rue Legouvé 10e
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