10/26/2019

NÛR ギャラリー/ 手描きのヴィンテージテキスタイル


NÛR Garelly 

サンジェルマンとサンミッシェルの間、セーヌにほど近い静かな裏通りに、素敵なブティックを見つけました。NÛRギャラリーという名前からもわかるように、ブティックよりギャラリーに近い空間。ヴィンテージのどっしり厚手の麻布(多分シーツ)に、大きな筆で大胆に描いた、墨絵風のアブストラクション絵画に目を奪われます。

所々に見える赤いイレギュラーなラインは、なんと手刺繍。大きい物はタピストリーに、小物はクッション類、大きめのトートバッグなどまで、全て手作りで2つと同じデッサンがありません。OXYMORE Paris というブランドで、そのデザイナーがこのブティクのオーナーだそうです。この他に、ろくろを使わずに手で作ったホワイト・グレーの陶器が展示販売されていました。これも全部形が違う一点もの。リネンとぴったりマッチした色合いの素晴らしいコーディネーションでした。


麻の微妙なカラーを組み合わせたパッチワークのクッション。ブラックのビロードとの組み合わせは、ヴィンテージリネンの粗い肌触りと、滑らかなビロードとの意外なミックス。

                                 (photos by NÛR Gallery)

NÛR Garelly      15 rue de Savoie 6e

10/21/2019

オーギュスト・ペレのパレ・ディエナ+FIAC


FIAC au Palais d'Iéna/ August Perret

オーギュスト・ペレの建てた Palais d'Iéna パレ・ディエナに、FIAC(Foire International d'Art Contemporain) パリ・コンテンポラリー・アートフェアの作品を場外展示中です。パレ・ディエナはペレの鉄筋コンクリート建築の代表作の1つで、以前にこのブログでも取り上げましたが(オーギュスト・ペレとフランクリン通り25番地のアパート、再度見る事ができました。

まず作 品の方から。Giuseppe Penoneのタイトルは "Matrice di Linfa" 直訳するとリンパの行列。作品は樹齢100年の杉の大木を2つに割って、中をくりぬき、赤い植物樹脂を流し込んだもの。床はレザーを繋ぎ合わせたカーペットで覆われています。受付にあった写真集を見ると、ジュゼッペ・ペノーネの作品は、木の枝、幹、石を使った作品が殆どで、自然と動物をテーマとした一見エコロジックなアプローチ・・・

初めから建物の方に興味があり、作品はついでだったとはいえ、ちょっとがっかりしました。ま二つに割られた幹、無残に切られた枝・・生き生きした自然は感じられず、自然の死骸のよう。リンパ、多分樹液のつもりの樹脂も、まるで血のよう。木を使えばエコロジックだとは限らないですよね。樹齢100年の木を切ってしまうのは? それにこの革のカーペットは、いったい何頭の動物の革が使われているのか?
しかしペレの大ホールの高い天井と梁、両側の円柱、大窓の中央に置かれた作品は、沢山のコンクリートの直線の中に漂うボートの様でもあり、この大ホールの幾何学的な美しさと面白いハーモニーだと思いました。
                   
 外壁のデザイン。ペレ特有の、透かし模様のコンクリートの装飾。
そしてやはり何といっても圧巻なのは、この螺旋大階段。
全部コンクリートそのままの素材の見える天井、壁、床。漆喰や塗料で塗ったりせずに、コンクリートそのままの表面を、混ぜる小石の大きさを変えたり、少々違った色に仕上げたりでアクセントを付けるだけで、ペレは本来あまり美しくないコンクリートの美しさを最大に引き出して見事です。そしてコンクリートを使っても、あくまでクラッシックなアールデコの設計。

Palais d'Iéna    9 Av.d'Iéna 16e   10月24日まで

オーギュスト・ペレのチャペル
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2014/11/blog-post_12.html
オーギュスト・ペレのヴィラ・スーラ
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2013/09/blog-post_20.html
オーギュスト・ペレとフランクリン通り25番地のアパート
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2014/02/25.html
30年代建築めぐり/ マレ=ステヴァンス、ルコルビュジエ、オーギュストペレ&Co.
https://kaleidoscope-design-paris.blogspot.com/2018/12/30.html

10/11/2019

イオナ・ヴォートランの可愛い雑貨達



Iona Vautrin capsule collection chez Monoprix 

モノプリのこの秋のカプセルコレクションは、イオナ・ヴォートランのネストシリーズ。鳥の羽にも見えるし、何かの植物又は海の生き物のようにも見えるモチーフがメインとなって、キッチンからリビングの雑貨、ベビー用品まで広いコレクションです。

 

10/06/2019

ガガーリンの旅


Voyage de Gagarine

ガガーリンって、あの宇宙飛行士のガガーリン。でも旅行といっても宇宙旅行ではなくて、彼の名の付いたイヴリー・シュル・セーヌの集合住宅のお話しです。
1963年、このcité Gagarineシテ・ガガーリン376世帯の落成式には、61年人類初の宇宙飛行で英雄となったガガーリン大佐ご本人が出席し、記念の植樹をしたそうです。イヴリーは昔から労働者の町で、共産党の一大拠点だったそうで、建物のデザインもロシアの労働者アパートの影響を受けているとか。因みにガガーリンの名が付いたアパートはパリ郊外にこのほか2つあり、どちらも労働者の町です。
シテ・ガガーリンはイヴリーの町のシンボル的存在だったのに、老朽化してスラム化し、建て直す事になりました。解体工事を目前にして、名残を惜しむ市民のお祭りが催され、一部をアーティスト達に開放し、捨てられ残された家具、雑貨、本、写真、バスタブ、トイレなどの廃物を利用したインスタレーション "ガガーリンの旅" が一般公開されていました。ポップな物、バスキア風、マンガ風、宇宙的な物など色々ありましたが、以下は私好みのセレクションです。

面白かったのが上とトップの写真の "夢" というタイトルの部屋。子供たちが参加したインスタレーションで、実際の方が写真よりもっとよかったです。一見楽しげでありながら、古びた建物、時代遅れのカーペットなどから、そこはかとないもの悲しさも・・・
これは一番グラフィカルだったもの。ブルーの照明とストライプ、壊れた壁や色々なオブジェが混じりあっています。写真写りがよいインスタレーション。
下は淡々としてユーモアいっぱいの壁画。壁とその腰板を黄色くペイントし、窓から覗いた電車の車内を描いています。棚の荷物もなんとなく可笑しいし、ボロボロで剥げかけている壁紙をくるっと巻いて、電車の窓のストールに!
単純な線だけで説得力のあるデッサン、外の展示のようなアグレッシブさが全くありませんね。
 
壁、天井、床を思いっきり使えて、どんなに壊してもいいのですから、さぞかし皆楽しんだことでしょうね。
壁紙をベースにして絵を描くと面白い効果がありますね。こんな時代遅れになった壁紙に囲まれて生活していた人がまだいたなんて驚き!

Cité Gagarine    1 allée Gagarine, Ivry-sur-Seine 94200

関連ブログ: イヴリーの星形アパート/ジャン・ルノーディ

9/27/2019

フィンランド大使館のインテリア


Les mobiliers de l'ambassade de Finland

先週の週末は文化財の日で、フィンランド大使館に行ってみました。
どこの国でも大使館は、建物やインテリアをお国柄のデザインでアピールしますが、フィンランドもその例にもれず。入り口すぐの階段の上には、アルヴァー・アアルトのランプ、ゴールデンベルが下がっているのが見えます(トップの写真)

北欧家具のシンプルさ、すっきりして何の凝った飾りもないフローリング、天井、壁、全てアットホームで、堅苦しい大使館のムードは全くありません。そしてパリのど真ん中だというのに、ここには全くフランスの匂いがしません・・・そう、もうここはフィンランドなのです・・・
インテリアに使われているテキスタイルが、どれもとても新鮮。上は壁に飾られたウールのタピストリー 。
セーヌ河沿いの壁いっぱいに並んだ窓を飾るカーテンは、リサイクルペーパーで作った糸を手編みした作品。たっぷりドレープして素晴らしい。
このような手工芸品、椅子、ソファー、ランプ類の作者、デザイナー、エディター名をリストしたコピーが、ビジター用に置いてあります。
会議室らしい部屋は、文化財の日なので特別にテーブルセッティングがされています。
壁の絵もフィンランドのアーティストの作品で、タイトルはIcy Prospect。フィンランドの自然のアブストラクション+マリメッコの食器+ちょっと可愛いシャンデリアと壁の照明という組み合わせ。上手いですねー。

9/19/2019

オディール・デックのユネスコ・ソファー/ 女性建築家No.3


Fauteuil UNESCO, Odile Decq/ Femmes architectes No.3

建築家のファーニチャー展のラスト、3人目の女性建築家はオディール・デック(1955年~)です。
展示されていたのは以前ユネスコのブログで取り上げた、会議室前の広いロビーを飾るソファー。ユネスコは建築当初から、世界のアーティスト達の作品を建物の内装に取り入れてきました。このO・デックのソファーは、2000年のコンペで優勝したものです。

以下は実際にそのソファーを使っているユネスコの写真、2年前に使いましたが再登場してもらいました。
ソファーの折り紙のような面白い形は、尼僧のフード、コルネットと呼ばれるユネスコ入り口の屋根、又はピロティーなどのフォルムを連想します。ホールの受付のカウンターもコンペで優勝した彼女のデザイン。ちょっぴり宇宙的でもあり、見方によっては60年代ヴィンテージっぽくもあり、ユネスコの雰囲気にマッチしていました。
   

このブログでは、あまり政治的な事や、宗教思想など個人的な事は触れないと決めています。しかしオディールデックの話は、フェミニズム無しに語る事はできません。
まず彼女の写真を見てください。若い頃からずっと(現在60代半ば)真っ黒な乱れたロングヘア、誇張されたコスメ、黒装束のゴシック/パンクルックです。世界的に評価される数少ないフランス女性建築家、マジメなビジネスの世界で成功した女性で、このようなスタイルをキープし続ける人は珍しいのではないでしょうか。筋金入りの反逆者だということを、身をもって表現しているのではないかしら・・建築という男世界で、相当な苦労をしたようです。彼女の作品は、アシメトリーで "ズレ" のある アンチ・コンヴァンショネル。空中の通路とか、カラー(特にレッド)の使い方など目を楽しませるトリックも。実際見ていないので写真からの判断ですが、彼女のデザインした建物は、そのわりには案外リーズナブルです。それほど巨大な建物を担当していないからかもしれませんが。
パリの建築学校で教師及び校長を務め、後にリヨンに自分の建築学校を建て、今パリにも別の学校がオープン予定。世界各国の学校でコンファレンスなど教育にもとても熱心です。

建築科の学生は60%が女性なのに、自分のオフィスを持ってそのヘッドとして仕事をするのはその10%にも満たないそうです。ある女性建築家のコメント:  女性建築家賞はあるが、男性建築家賞はない。女性建築家賞をもらった時は、複雑な気持ちだった。なぜ "女性" でなくてはならないのか? 迷った末、しかしまずここを通らなければならないのだと思い、受賞しました。