モンマルトルの名所は、サクレルール寺院だけではありません。丘の麓にマルシェ・サンピエールという生地屋街があるのですが、実はこれが隠れた“名所”で、手芸好きやモード学校の生徒達にはもとより、カーテンなどの部屋の模様替え、学芸会や仮装パーティの衣装や舞台を作る時、クリスマスやイースターのデコレーションをする時など、パリジェンヌはここへ駆けつけます。必要な材料がここ一か所で全部揃うから。リボン、タッセル、ボタンなど部品のカラーとバラエティーの豊富さも驚くほどですが、特にデッドストックの安く美しい生地が沢山あるのも大きな魅力。カーテン生地などは3メートル幅まであります。その中で私の好きなのはモリーヌ。創立1879年と130年の歴史のある老舗です。
ため息の出る色の美しさと徹底した量の商品は圧巻
70-80年代以後、自分で服を作る人が減る一方で、経営は苦しいと思われます。マルシェ・サンピエールの他の生地屋も、サクレクールに来るツーリストの数が多くなればなるほど、土産物屋に様変わりしてしまい残念なことですが、モリーヌとお隣の4階建てドレフュスや、その周辺の生地屋はまだ頑張っています。モリーヌは特にテキスタイルで作ったバッグや椅子の張り替えなどのサンプルを飾って、古臭い生地問屋のイメージから脱皮し、手芸のブログを立ち上げて、若いジェネレーションのお客獲得に勤めています。最近エコロジーとスローライフでdo it yourselfの風が吹いているので、少しづつお客が増えているいるようですが、今後どうなるでしょうか。