ポンピドーセンターでアイリーン・グレイ展をやっています。E.グレイは20世紀初頭にインテリア、建築の分野で活躍した女性ですが、ミステリアスな影のある人物のようで、なぜか30年代を境に何十年も忘れ去られていました。70年代に彼女のついたてが空前の高値で落札されて話題なり、また先日サンローランの死後所持品がオークションされた時に、E.グレイ作のドラゴンの肘掛椅子が、想定価格3百万€のところ、なんと2千百90万€で落札されるなど、最近彼女の株は急上昇中です。
Villa E1027 |
1878年にアイルランドで生まれ、ロンドンのアートスクールで絵を勉強した後漆塗りに興味を持ち、パリに居を移し、まず日本の塗りの専門家の協力を得て、オートクチュールのメゾンや富裕層、著名芸術家などの注文を受け、沢山のすばらしい什器を作りました。20年代後半からは、ジャン・ヴァドヴィチやル・コルビュジエなどの建築家から影響を受け、そのころ女性には門戸が開かれていなかった建築を手掛けます。1926年にジャン・ヴァドビチとヴィラE1027を、1934年には自分自身のヴィラを設計。亡くなる前に個人的な書類を破棄したらしく、その後の動向ははっきりせず、1954年に新しい自宅Lou Pérouの設計を最後に建築から離れ、1976年にパリで亡くなりました。
彼女の家が裕福だった事、父親が画家だった事がラッキーだったとはいえ、19世紀に生まれ、一貫して自分の理想を追い求め、独立を保った1人の女性の歴史としても、感慨深い展覧会でした。
この小テーブルは彼女のトレードマークのように、どのポスターにも使われています。 |