4/03/2013

トリックスの椅子

La chaiseTolix

デザインの優れている椅子は世界に沢山ありますが、その中でも大ヒットの一つはトリックスのモデルAでしょう。トリックスの名前を知らなくても、誰もがカフェやレストランで一度は見たことがあるのではないでしょうか。1934年に発売されて以来売れ続け、今ではニューヨークのMomaやパリのポンンピドーセンターなどの美術館に、“インダストリー”スタイルの古典として展示されるほど

元はブルゴーニュ地方でブリキの台所用品を作っていたグザビエ・シャールが、1927年にTolixの名を商標登録し、メタルの椅子やテーブルを作り始めたのが始まりです。田舎の工場の社長さんが、それと知らずにバウハウスの真髄のデザインの椅子を作ってしまったわけです。丈夫で、使わない時は重ねられる等の機能性に富み、手入れも簡単なので、職人のアトリエ、オフィス、病院など公共施設で、また錆びないことからカフェのテラスや公園など戸外用の椅子として人気を呼びました。プラスティックの椅子に押されるなど売り上げが大きく下がった時に、男の職工達の中でただ一人の女性だったシャンタル・アンドリオがトリックスを買い取り、一握りの同僚達の協力を得て世界的な企業に蘇らせました。一人の先見の明のある女性が立ち上がったというのも、頼もしいお話です。会社建て直しに際して、ジャンフランソワ・ジニアンとエロワ・シャファリのデザインスタジオ“ノーマル・スタジオ”にアートディレクションを依頼し、手工業時代のノウハウと品質重視のデザインを確立し、また輸出にも積極的に乗り出し、今では製品の半分はアメリカからの注文だそうです。

最近のインダストリー家具の流行もあって、トリックスの椅子はパリのおしゃれなボボ達のオフィスやキッチンに、また彼らの行くカフェやレストランにと大活躍80年前のデザインとは思えない新鮮さでシンプルイズ・ベストのお手本のようです。フランスの工場が中国やベトナムの安い人件費に太刀打ちできず次々閉鎖する中、数少ないメイド・イン・フランスの商品なので、今後もぜひ頑張ってもらいたいものです。
BoBoボボについて: Bourgeoisブルジョワ Bohèmeボヘミアンの略。ファッショナブルな富裕層で、環境保護やリサイクルに関心が深く、フランス製フェアトレードの商品を好み、高いデザイナーズブランドの服に古着をミックスしておしゃれに着るタイプの、現代版のブルジョワの。古いブルジョワ達は781617の辺り(ブローニュの森から日本大使館あたりまでのパリの西側)に住んでいまが、ボボは敢えて庶民的な場所を好みます。けれどボボが集まる場所にはトレンディーなショップやカフェができて地価が上がり、庶民が追い出される困った現象。マレは完全に高級化しはサンマルタン運河周辺、フォーブル・サン・ドニ地区などが急速にボボ化中。

Tolix   http://www.tolix.fr/en