デザインの優れている椅子は世界に沢山ありますが、その中でも大ヒットの一つはトリックスのモデルAでしょう。トリックスの名前を知らなくても、誰もがカフェやレストランで一度は見たことがあるのではないでしょうか。1934年に発売されて以来売れ続け、今ではニューヨークのMomaやパリのポンンピドーセンターなどの美術館に、“インダストリー”スタイルの古典として展示されるほど。
元はブルゴーニュ地方でブリキの台所用品を作っていたグザビエ・ポシャールが、1927年にTolixの名を商標登録し、メタルの椅子やテーブルを作り始めたのが始まりです。田舎の工場の社長さんが、それと知らずにバウハウスの真髄のデザインの椅子を作ってしまったわけです。丈夫で、使わない時は重ねられる等の機能性に富み、手入れも簡単なので、職人のアトリエ、オフィス、病院など公共施設で、また錆びないことからカフェのテラスや公園など戸外用の椅子として人気を呼びました。プラスティックの椅子に押されるなど売り上げが大きく下がった時に、男の職工達の中でただ一人の女性だったシャンタル・アンドリオがトリックスを買い取り、一握りの同僚達の協力を得て世界的な企業に蘇らせました。一人の先見の明のある女性が立ち上がったというのも、頼もしいお話です。会社建て直しに際して、ジャンフランソワ・ジニアンとエロワ・シャファリのデザインスタジオ“ノーマル・スタジオ”にアートディレクションを依頼し、手工業時代のノウハウと品質重視のデザインを確立し、また輸出にも積極的に乗り出し、今では製品の半分はアメリカからの注文だそうです。
BoBoボボについて: Bourgeoisブルジョワ Bohèmeボヘミアンの略。ファッショナブルな富裕層で、環境保護やリサイクルに関心が深く、フランス製やフェアトレードの商品を好み、高いデザイナーズブランドの服に古着をミックスしておしゃれに着るタイプの、現代版のブルジョワの事。古いブルジョワ達は7、8、16、17区の辺り(ブローニュの森から日本大使館あたりまでのパリの西側)に住んでいますが、ボボは敢えて庶民的な場所を好みます。けれどボボが集まる場所にはトレンディーなショップやカフェができて地価が上がり、庶民が追い出される困った現象も。マレは完全に高級化し、今はサンマルタン運河周辺、フォーブル・サン・ドニ地区などが急速にボボ化中。
Tolix http://www.tolix.fr/en
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